JAMJAM日記|ベトナム編 大友良英 Otomo Yoshihide

撮影:石川直樹

2015/09/22

タライ、竹、金属の箱、ホース

暑い。今日もめちゃくちゃ暑い。例年なら多少は気温が下がってる時期だそうだけど、今年はこっちの人にとっても暑いようだ。そんな中、朝から街に出て、ホースやら、インシュロックなんかの素材、そして工具を買い込む。英語が全然通じない。数字ですら通じない。でも、なんとかなるもんだ。いろいろ試させてもらったホース屋のお兄さんとなんとなく仲良くなる。なんとなくだけど。

キャプション:ホース屋のお兄さん(撮影:大友良英)

午後は有馬さんとともに交流基金へ。ここで日本から到着したばかりの石川直樹と合流。さらに今回さまざまな協力をしてくれるニャーサン・コレクティブ(Nha San Collective、通称ニャーサン)のレー・ウエン(Le Uyen、通称ウエン)さん、そこのアーティストで楽器製作の手伝いをしてくれるグエン・バン・ガー(Nguyen Ban GA、通称ガーさん)フン・ティエン・ソン(Phung Tien SON、通称ソンさん)、記録映像のドン・タオ(Dong Thao、通称タオさん)、通訳のファン・タイン・ガー(Phan Thanh Nga、通称ガーさん)、そしてハノイ在住の日本人建築家竹森紘臣さん、ハノイに留学している一橋大学大学院生の加納遥香さんと対面。みなやわらかくてとてもいい感じだ。

有馬さんからみなに今回の計画の骨子の説明があったのち、わたしからこんな楽器を作りたいって説明を。一般参加者たちには小さい楽器を作ってもらうので、このチームはそれを手伝ったり、あとは簡単には作れそうにない低音の出る大きな楽器を作ってもらえたら、そんな提案をしてみた。

タオさん(撮影:大友良英) ウェンさん(撮影:大友良英) ガーさん(撮影:大友良英) ソンさん(撮影:大友良英)

わたしの書いたつたないスケッチを参考に、早々に旧市街に買い出しに。金属加工店街、竹屋街、プラスティック製品街で次々と買い物をしていく。大きなプラスティックのタライを買ったら、有馬さんに「これいくつか並べて叩くみたいなこと、やるわけじゃないでしょうね」と釘をさされる。え~、そういう素朴なもんもあってもいいと思うんだけど、ダメなのかな。低音があったほうがいいと思うんだけど……。

竹の店では、大きな太い竹を何本か。そういえばどうやってこれを運ぶのかと思ったら、住所を伝えると原付バイクに竹をくくりつけて運んでくれるそうだ。いや、運んでって簡単に言うけど、10cm以上の直径の4~5メートルはある竹だ。日本だったらトラック以外では運ぶ方法がないと思うけど、こっちではなんでもバイクで運ぶ

なんでもバイクで運ぶ(ドン・タオ)

金属加工の店では、その場にあるいろんなものをみなで叩いたりこすったりしながら音を試してみる。ちょうど店先にあった、おそらくは業務用かなにかのシンクに使う巨大なステンレス製のバスタブくらいの箱が、あまりにいい音なんで譲ってくれないか交渉してみる。どうやら別のところに持っていくものらしく、新たに作るのに2日かかるけどいいか……みたいな交渉をしてるようだ。そうこうしているうちに、奥にも似たような形のブリキ製の箱を発見。これもまたいい音がする。これも欲しい……なんてことを言っていたら、先方も面倒くさくなったのか、ここにあるもの3つ、そのまま持っていっていいという。おまけに、ガーさんがさらに交渉して、それぞれの箱に吊るすことができるよう、金属の取っ手を溶接でつけてもらうことに。やった~。

店の若いのがその場で器用にちゃっちゃと見事な手並みで溶接をしてくれる。溶接跡は細かいヤスリで磨くのかと思ったら、銀色のスプレーで一吹き。一瞬で銀色になるけど、まあ、こちらも楽器として使うわけだからいいのか。この箱、叩くのもいいけど、弓でこすったらきっといい音がするに違いない。早々に加納さんにお願いして、民族楽器屋さんで弓を買って来てもらうことに。実は加納さんは、ハノイのオーケストラにも参加しているヴァイオリニストでもあるのだ。

金属加工の店(撮影:大友良英) 素材を選ぶ(撮影:ドン・タオ) 素材を選ぶ(撮影:ドン・タオ) 素材を選ぶ(撮影:ドン・タオ)

この大きな金属の箱も3つまとめてバイクの後ろにくくりつけて運んでくれる。なんて便利でフレキシブルな国なんだ。単にフレキシブルなだけじゃなく、実際にこれを安全に運ぶ技術に裏打ちされているのもいいなあ。こういうの本当に嬉しいし、気持ちがあがる。いやね、日本ではいろんな規制があって、その規制もですね、ちゃんと理由があって、人々が安全に生きるのに貢献してるわけだから、全然いいんだけど、でもね、こういう技術に裏打ちされたおおらかな生命力みたいなもん、本当は大切だと思うんだけどね。

夕方、交流基金の中庭にぞくぞくと楽器が……いやいや、この先楽器になるかもしれない竹や金属や、プラスティックやらの素材が集まってくる。弓で金属をこすってみる。いい音だ。なんだか、素材たちを見るだけでウキウキする。河井さんも集まった素材を見て嬉しそうな顔をしている。こういう人が担当だと本当にやりやすいというか、モチベーションがあがる。一緒にやってくれる人はこうでなくちゃ。明日からどんな展開になるか、楽しみ、楽しみ。

旧市街で買い出し

夜は再びホテルの近くのおもちゃ屋台街に出る。昨夜は雨が降り出して、少ししか見れなかったけど、今日は充分に時間がある。300mくらいはあるかな、夜になると2車線の通りは車道も占領する形で全ておもちゃやお菓子の屋台でうめつくされる。原色のプラスティックのおもちゃ色に染まった通りのあちこちからブブセラの音が響きわたる。まるで向こうの店とこっちの店でコール・アンド・レスポンスをやっているかのようで、面白い。そんな中に、ときどき祭りで使うおもちゃの太鼓や、回転させるとカタカタ音が出る小さいおもちゃの音が入り混じる。これだけでも充分オーケストラのようだ。つられて大小さまざまな色のブブセラを買ってしまう。さてさて、これをどう使うかな。

夜、ホテルの部屋で、朝購入したホースをいろいろな長さに切って、ブブセラのマウスピースを二つつないでみる。おお! いける、いける。バスクラリネットのような音が出たり、サックスのフリークトーンのような音が出たり。ホースに縦笛のように穴をあけると、音程も出せる。明日、ホースとブブセラを買い足して、もう少しいろんなバリエーションのものを作ってみるか。

ブブセラの音が響きわたる(撮影:石川直樹)
ブブセラの音が響きわたる(撮影:石川直樹)
屋台でうめつくされる(撮影:石川直樹)

屋台でうめつくされる(撮影:石川直樹)