JAMJAM日記|ベトナム編 大友良英 Otomo Yoshihide

撮影:石川直樹

プロローグ

いよいよアンサンブルズ・アジア・オーケストラの各地での実践編が動き出す。ハノイで簡単に手に入る日用品を使って、ワークショップ参加者の地元の学生たちや、日本から来る学生たちと一緒に音の出るものを自作、それでオーケストラを作って演奏するというのが、今回のわたしたちのミッションだ。名づけてハノイ・コレクティブ・オーケストラ。

 

参加者は音楽経験のほぼない人たちばかり。もちろん楽器もないし、楽器を自作した経験もない。当初はハノイの学生たちだけでやる予定だったけど、ちょうどこの時期に、NHK Eテレの番組「東北発☆未来塾」でアンサンブルをテーマに塾の先生をしてくれという依頼があり、だったらということで、東北の学生たちも連れてきて、ハノイの学生たちと交流してもらいつつ、一緒にオーケストラを作ってしまうところまでをやったらどうかというのがわたしの提案。ベトナムの学生と日本の学生が協力しながら工夫して音の出るものを作って演奏する……という方向で検討することになった。ただ一緒にやるだけでは工夫がないので、そのへんは有馬恵子ディレクターがアンサンブルズ・アジア・オーケストラならではのコレクティブな方法を考えてくれている。

 

アンサンブルとはなにか。言葉の通じない同士で一緒になって、作った経験すらない楽器を作る。それでなんらかの大編成のアンサンブルを作ってみる。かなりな無茶ぶりだし、そもそもわたし自身、こういう形で楽器を作ったこともなければ、そうやって作った楽器だけでアンサンブルを組んだこともない。東北ユースオーケストラを作ってきた有馬さんにしても、こんな企画は初めてだ。皆にとって等しく初めてづくし。

とはいえ、無謀な企画などではない。彼女は事前に何度も調査に行き、現地の協力者も得て、ある程度の確信を持ってこの計画を進めている。わたしにしても、自分自身が使う自作楽器は若い頃からたびたび作ってきているし、今回ゲスト参加してくれる美術家の藤浩志さんは、学生たちと共同で日用品を使ったモノ作りをすることに長けている。自作楽器作りのワークショップをやった経験もあって非常に心強い。さらにこんな試みに興味をもってくれる写真家の石川直樹やベトナムのアーティストたちが参加してくれる。間違いなく面白いものになるはずだ。

 

さてさて、どんなコレクティブ・オーケストラが生まれたのかは、日記をお楽しみに!