JAMJAM日記|タイ編 大友良英 Otomo Yoshihide

2015/03/29

トゥクトゥクでマーケットへ

いよいよサンデーマーケット・オーケストラ本番の日。なのに、朝から体調が悪くて、体がいうことをきかない。疲労がたまってしまったのかもしれない。有馬さんに先に会場にいってもらい、ぎりぎりまで体を休めるけど、なかなか起きられない。まいったなあ。コンビニで、効きそうな見た目の栄養ドリンクを2本飲んで、トゥクトゥクに乗って会場へ。あ、そうそう、書き忘れたけど、チェンマイの交通機関は、トゥクトゥクと呼ばれるバイクタクシーが主力。ほかにも乗合タクシーがあるけど、これはどうやって乗っていいのか、ぽっと来た外国人には難しい。トゥクトゥクはどこにでもいて、それこそタクシーのように手を上げれば止まってくれる。値段は行き先を告げて毎回交渉。外国人だと多少高く言われるけど、それでも100バーツだから300円くらいかな。そこから交渉して60バーツだったり、80バーツにしてもらう。開放的でめっちゃくちゃ気持ちがいい。日本でも夏はこれを走らせたら気持ちいいのになあ。

夕方4時すぎ、すでにサンデーマーケットは始まっていて、会場のあるラーンナー・アーキテクチャー・センターまでトゥクトゥクは入れない。しかたないから、マーケットの中でオーケストラをやったら面白そうな場所を探しながら、うろうろ歩いて会場に向かう。マーケットを見ているうちになんだか元気になってくる。ドリンク剤が効いたのか、それともマーケットの楽しげなオーラに触発されたのか。そうこうしているうちに、すでにサンデーマーケット・オーケストラのワークショップ開始30分前。元気になった上に、マーケットの中を練り歩くことを想像したら楽しくなってしまって、いい気持ちで会場の中庭に着いたら、待っていた有馬さんに一言「遅い!」と怒られる。

ひ~~、ごめんなさい。本番頑張るんでゆるして~。

Tuk-Tuk(トゥクトゥク)

トゥクトゥク
オート三輪のタクシー、レンタカー。

悩む前に、音を出せ!

会場には先日のラーンナーの音楽をやる子どもたちが二十数名、真っ赤なユニフォームを着て、楽器をセッティングして待っている。嬉しい。待たせてごめ~~ん。それ以外はというと、う~~~ん、参加者少ないなあ。昨日のワークショップに来てくれた人たちに、あとはちょびちょびって感じ。あ、バンコクから来ていた日本の方も参加してくれている。うれしいなあ。ありがとう。アーノントさんが一生懸命会場に見にきている人たちにオーケストラに参加しませんかって声をかけてるけど、そんなんで参加してくれる人がいるわけもなく、まあ、子どもたちと一般参加者のバランスは悪いけど、まあしかたない。

集まってくれた皆に、指揮でサインを出しながら即興で音楽を作ってくやり方を説明しながら、実際に音を出しつつリハーサル。実はこのやり方をそのままアジアにいきなりもっていくのがいいのかどうか、正直ものすごく迷っていて、今回も本当にこれでいいのかどうか、確信をもってやっているわけではない。いつも書いているけど、自分がやっているこのやり方を、全然文脈が違うところにもっていっていきなりやってしまう暴力性みたいなものをやはり考えてしまうし、なにより、本当はもっと地元の皆と、話し合いながら、どういう方法が一番いいのかを考えつつ、やっていくべきだと思ってる。ただ今回は有馬さんがアーノントさんたちと事前に何度も打ち合わせをしながら、まずはこういう形でもいいからやってみようということになったわけで、オレ自身もごちゃごちゃ悩む前に、まずは音を出してみなくちゃ始まらないってずっと思ってたのもあって、かつ「サンデーマーケット・オーケストラ」という名前の魅力もあって、ことここに至っているわけだ。そんなことが頭をよぎりつつのリハーサル。

リハーサル

こんなことをやったことのない子どもたちは最初はとまどっていたし、言葉がうまく通じなくてオレもとまどったけど、でもバラバラだった音が、リハとともになんとなくまとまってくる。ただでさえ強力なパーカッションを演奏する彼らがまとまりだすと、すごい音になっていく。リハだってのにいつのまにか会場にはたくさんのオーディエンスもいる。ピアニカや笛、ウクレレ、おもちゃの小さい打楽器なんかを持ってきてくれた一般参加者たちの音がかき消されちゃうけど、まあいいか。あとでなんか対策は考えよう。

本番はいつも楽しい波乱の連続

お客さんがいっぱい集まったところで、まずは子どもたちがいつも演奏し踊っているラーンナーの音楽を披露してもらう。サンデーマーケットに来ている人たちが続々集まってくる。すごいすごい。会場からは拍手喝采。でも、この拍手喝采で喜んでるわけにはいかない。だってこの後に、彼らと一般参加者とオレで演奏しなくちゃならないわけで、ハードルがめっちゃ上がってしまった感じだ。さすがに少しだけナーバスになったけど、指揮で皆をひっぱらなくちゃいけないオレがつぶれてしまってはお話にならない。自分を奮い立たせるために、一つだけ、いや二つだけ自分の中の目標を決めよう。

実は彼らが演奏するときに、いつも気になっていたことがあって、それは、シンバルをもってアクロバティックに踊りながら演奏する双子の男の子たちが、まったく笑わないというか、いつも厳しい顔をしてることだった。西成の子どもたちにはじめて会ったときにも似たような表情をした子がいたのを思いだしたのだ。あの表情を崩させないとアンサンブルは成り立たない……そう思った。だからあいつらを笑かそうとずっと思っていて、本番前も言葉が通じないなりにいろいろちょっかいを出したけど、どうもうまくいかない。そもそもこっちを見てもらえない。だからあいつらさえ笑わせられれば、今日は成功……そう思って指揮することにした。そしてもう一つの目標は、一般参加者の音の小さな控えめな楽器を、この中でなくてはならない存在にしていくこと。この二つを達成すれば、初回はよしとしよう。

本番は、夢中になって指揮しているうちに、オレも彼等も大爆笑していた。なんで笑ってるんだかわからないけど、双子のあれだけ笑わなかった彼等も笑ってる。笑っているどころか腹を抱えて大笑いしている。ラーンナーの強烈な打楽器と、ピアニカやおもちゃみたいな楽器がアンバランスにせめぎあいつつ会場の人たちも手拍子で参加してくれた。悪くないかな。

そんなこんなを中庭でやっているうちに、サンデーマーケットの中をパレードしたくなってしまって、皆を引き連れてマーケットの中に乱入してしまった。アーノントさんも有馬さんも慌てたと思うけど(ごめんなさい)、え~~い、ままよ、なるようになれ。怒られたらすぐにやめればいい。安全だけは気をつける覚悟で皆を引き連れてマーケットの中に入って行った。歩いているときはビートを出し、交差点ごとに止まって謎の音楽を展開、ここでやっと小さい音の楽器もちゃんといてくれる音楽をやれたように思う。もうひとつの目標達成。よっしゃ! 心の中で小さなガッツポーズ。

と、ここまで書いて気づいたけど、自分でやった演奏をこうやって自分で文字にして説明するってのは難しいなあ。今回は何があったのかどうしても自分の言葉で伝えねばって思いで書いているけど、できればだれか第三者が客観的な目でもって見てくれた文章とあわせて読むのがいいように思う。次回からはそうしよう。

サンデーマーケット・オーケストラ

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打ち上げこそ交流の肝

終わったあとは、十数名で打ち上げ。打ち上げの時間こそが交流の肝だ。美味いメシと酒(オレは呑めないけど)そしてくだらない話とともに、今日の演奏のこと、今後の話も必ず出てくる。打ち上げで音楽の話ばっかするミュージシャンは、たいていたいしたことないやつ、とりわけ今日の演奏のダメだしとかするやつはダメなミュージシャン……ってのがオレの持論なんだけど、でも、打ち上げ開始1時間後に、今日の演奏の話が始まって、この先どうしたらいいかって話も出てきて、なぜなら誰にとってもまったく未経験のことで、だからこそそんな話をするのはたぶんとても自然なことで、こういう流れなら悪くないなって思う。皆それぞれ思うところがいっぱいあるみたいで、きっとそんな思いが次につながっていくんじゃないかな。神戸ではじめて音遊びの会が始まったときも、西成でこどもオーケストラをやりだしたときも、こんな感じだった。

サンデーマーケット・オーケストラ……この名前の可能性は確かにあると思う。今回はただマーケットの中でやっただけだけど、もしかしたら、僕ら自身が皆でサンデーマーケットという名の場を作り、そこで音楽だけじゃなく、いろんなことをやっていく……そんなことを考えだしたら、止まらなくなってしまった。

まだ見たことのない音楽をどうやって皆と作っていくかって話は、実はどうやって生きていくか、まだよく知らない人たちとどうやって一緒にやっていくのかって話とほぼイコールなような気がしている。文字通り言葉の通じないもの同士が、何かをやりだしている……そのことを大切にできればって思っている。有馬さんやアーノントが始めたコレクティブの発想、この先の展開を楽しみにしたい。