JAMJAM日記|フィリピン編 大友良英 Otomo Yoshihide

撮影:石川直樹

世界を見るということ、地図を作るということ

僕らはどうやって目的地に行くんだろう。
地図を持って歩くときもあるかもしれない。
今ならiPhoneのナビを見ながら歩くこともあるだろう。
一度行った場所なら、記憶を頼りに、うろ覚えの道を歩くことだってあるし、
そんなことはなにも考えず、一緒にいる友人について行くだけで目的地につくことだってある。
安心してたのに迷子になることも、目的地と違うところに行ってしまうことだってあるだろう。
それでいいときもあれば、困るときだってある。
一時は困ったけど、結果的にはそれで良かった・・・ってこともあるし、逆もあるかな。

何か目的地らしきものはあるにはあったけど、
現実にこつこつとぶつかりながら歩いているうちに、気づいたらここにいる・・・
それが目的地だったかどうかは、今となってはよくわからないけど、
でも、ここにいる。
ここにいて自分は何かをやっていて、他の人もそれを必要としてるような気がする。
それで、間違ってなかったような気がするけど、そもそも何が間違いで、何が正しいかなんて簡単にわかるもんじゃない。自分の人生のことを考えるとそんな感じかもしれない。

成田発マニラ行き最終便のなかで、そんなことをぼや~~んと考える。

「ENSEMBLES ASIA(アンサンブルズ・アジア)」というプロジェクトが始まった。
正確にはわたしが国際交流基金アジアセンターとともにアイディアをだしあい、何人もの人達と案を練りながら、皆とともに始まったプロジェクトだ。
それがどんなプロジェクトか、どう進行していくかは公式の文章で書くとして、ここでは、いくつかが同時進行していくプロジェクトの中でも、子ども達とともに作っていくことになるであろう。「ENSEMBLES ASIA ORCHESTRA(アンサンブルズ・アジア・オーケストラ)」の調査進行に沿って、わたしは日記形式でそこに至る思索や過程を中心に、試行錯誤の様子もなるべく出しながら書いていこうと思っている。またプロジェクトの参加メンバーたちも、それぞれ独自の方法で、調査の様子をここにアップして行く。
目的はアジアの各国と日本を結びながら、いくつものアンサンブルをそれぞれの地域の子ども達と作っていくことだ。
ただし現状、地図もナビもない。自分たちの手で、いろいろな人達と知り合いながら地図を作っていく。そうやって調査をしていきつつ、どうアンサンブルを作っていくか。まずはそこからはじめる事にした。

ENSEMBLES ASIA ORCHESTRAのディレクターは有馬恵子さん。わたしとは2013年東北ユースオーケストラでご一緒している。そのときのオーケストラを作る彼女の手腕を見て、今回のディレクターをお願いした。調査からはじめて現地の子ども達とじっくりアンサンブルを作り、それを繋げていくのに彼女が適任だと思ったからだ。その彼女のアイディアで選ばれたパートナーは社会学者の開沼 博さんと写真家の石川直樹さん。音楽のプロジェクトなのに音楽家ではない2人が選ばれたわけだけど、なぜこのメンバーなのかについては追々日記の中で書いていく。これから数年、彼らとともにアジア各地で子ども達と一緒にアンサンブルを作り、やがてはそれらが結びついてゆき、未知のオーケストラないしは複数のアンサンブルを響かせていく・・・そんなことを考えているわけで、これって彼らとともに新たなバンドを作ったってことなのかもしれない。そう考えると、なんだか面白そうでドキドキしてくる。
もちろん有馬さんも開沼さんも石川さんも音楽家のように音を出すわけではないし、作曲したり音楽の指導をするわけでもない。ただ、こういうことをやっていくにあたって、同じのもを前にしても、全く違う角度から見てくれる人たちが必要だと思ったのだ。ちょうど一つの音楽をつくるのに低音、高音、リズム、メロディ、和音、そうしたカテゴリーではくくれない音・・・さまざまな角度から音を出す人達が必要なように。