INTERVIEW

バニュワンギ

バニュワンギのガムラン

インタビュアー|大友良英・石川直樹

今回のインドネシア調査で大友良英、石川直樹が最も衝撃を受けたバニュワンギのガムランと舞踊。終了後に楽団のリーダーを囲んで行ったインタビュー内容を紹介します。

──(石川)今見た劇はどのような構成になっているのでしょうか?

1幕ごとに別々の内容の物語になっています。1幕目は鳥、ガルーダをテーマにしています。国章にも使われているガルーダはインドネシアの象徴です。2幕目はジャオックというバリ島にある町に伝わる踊りです。3幕目はバニュワンギ特有の踊りでジャラナン(馬)の踊り「ジャラナン・ブト」といいます。ジャラナン(馬)の踊りはいろいろな種類があります。ジャラナン(馬)には「ラトゥ」と呼ばれる馬の女王、統括するような女王がいます。それに対してブトと呼ばれる、大きくて背が高く、色が黒くて恐ろしい悪役みたいなものがいて、そのブドと女王・ラトゥの対決を描いているのが「ジョゲットの踊り」です。
4幕目は猫の踊りでクチンガンといいます。5幕目はバロンの戦いの終わりを意味するバロンガンという一幕で、ラトゥが家臣たちに対して怒り狂うという内容です。最後はトランス状態(ダディ)になる踊りです。

──(石川)トランス状態にならないといけない理由があるんですか?

ずっと踊っているので最後は疲れてしまうんです。そうするとトランス状態(ダディ)になりやすいんですよ。自分の魂を持っているけれど、別の魂に取り憑かれている状態です。トランス状態(ダディ)になるというのは、他の霊魂に取り憑かれるということです。

──(石川)通常はこのような上演はどこで……いつされるんですか?

ハリラヤと呼ばれる祝日、トゥジュブラサンと呼ばれる8月17日の独立記念日、ハジャタンと呼ばれる祝い事の時、結婚式、キタナンと呼ばれる割礼のイニシエーションを行う時に上演されます。
今日は1時間ほどの上演でしたが、フルで上演すると、朝9時から夕方4時半頃までノンストップで上演します。12時間上演することもあります。

ガルーダ(撮影:石川直樹)
ガルーダ(撮影:石川直樹)

──(大友)各場面の間にナレーションがありました。何を語っていたんですか?

上演の演目と踊りの説明をしていました。

──(大友)楽団の人数は何人くらいなのでしょうか?

43人です。今回は時間が短かったからこのメンバーですが、祭事の時などはもっと大勢になりますし、外からゲストを招くこともあります。

ジャオック(撮影:石川直樹)
ジャオック(撮影:石川直樹)
ジャラナン(撮影:大友良英)
ジャラナン(撮影:大友良英)

──(大友)楽器に白いドラムとシンバルがありました。それらは本来のガムランの楽器ではないと思いますが、これらはいつ頃から使っているのですか?

当初ガムランの編成はクトックとクナン、それからゴンだけでしたが、1950年代にジェドールを取り入れました。ジェドールというのは木と牛の皮で出来た小さな太鼓です。そして確か1970年代からドラムセットなどを使うようになったんだと思います。ジャラナン(馬)の脚の動きに合わせてアクセントをつけるために取り入れました。

白い大太鼓とシンバル(撮影:大友良英)
白い大太鼓とシンバル(撮影:大友良英)

──(大友)いつから、マイクやPAといったミックスサウンドシステムを使うようになったのでしょうか。マイクにディレイ(エコー)も使われていたようですが、それも70年代からですか?

60年代にTOAの拡声器を使うようになり、ほぼ同時期にマイクを使い始めました。
ディレイ(エコー)を使うようになったのは80年代頃からで、マイクを買ったらついてきた機能だったので使い始めたんです。

──(大友)どうしてエコーを使うのですか?

本来は使わなくても大丈夫です。でもさっきの踊りでは、やっぱりほとんどエコーを使うのです。
沢山人が集まる大きな会場では、もっと良いサウンドシステム(PA)を使う事もあって、そのときはエコーは使いません。でも村でやるときはワオワオというエコー音が必要なんです。そのほうが寂しくないですから。

──(大友)結果的には、レゲエのダブ・ミュージックのような効果が出ていて面白く聴くことができました。